世界的に写真はアナログからデジタルへ移行している。
けれども、写真を本業とする者、特に芸術写真の世界においては、アナログは不滅と言える。
コニカミノルタがアナログカメラとフィルム事業から完全撤退を決めた。
それでなくても、いつの間にかなくしてしまったレインジファインダーのコンタックスのレンズ2本を再購入しに先日カメラ屋へ行ったら、コンタックスの販売元である京セラがコンタックスの製造中止を発表したため、慌てて買い占める人が続出して店頭にも在庫にもなく、仕方なく、ニューヨークで入手することになった。
わたしはデジタルカメラを否定はしない。
否定するどころか、軽いスナップを撮ったり、商品見本用に物撮りするには便利だと思う。
多分、フォトジャーナリズムにおいては、もう、デジタル以外、考えられないだろう。誰がどれだけ早くニュース画像を送るか…にかかっているフォトジャーナリズムでは、撮った次の瞬間には画像の結果が見れ、パソコンを持ち合わせていれば、世界中どこにいても、簡単に、迅速に、それを本社に送ることができる。
雑誌、特に日本のように写真のクオリティーが低い雑誌の多い国では、デジタルで丁度いい。
けれども、わたしはたとえどんなにデジタル写真化が進んでも、絶対に、アナログ、つまりフィルム写真は消えないと信じている。富士フィルムは「写真文化を守り育てることが使命」として事業継続を宣言した。
そうして、皮肉なことに、キャノンやニコンがフィルムカメラの販売を縮小するほどに、フィルムカメラは売れている。
デジタルは単なる印刷物である。日本写真芸術学会会長の原直久さんがおっしゃるように『色の深みも階調も銀塩写真にはかなわない』。
多分、それがわかっている人達が、その銀塩写真が消え去ってしまうのを懸念して、フィルムカメラを買い込んでいるのかもしれない。
「引き伸ばした時の画像はポジフィルムの独壇場」
日本カラーラボ協会専務理事の尾花経久さんはおっしゃる。
わたしのオリジナルプリントは、すべて、アナログである。
よく、ハシリの流行を追った、キバツで、だけど全くアートとは呼べないような一過性の写真を「今風」と思い込んでいる人は、わたしの作品を見ると、極端にふた手に分かれる。
クラシックですね、と相手にしない人と、
言葉にできないくらい心に伝わる、という人と。
わたしは決してこれからもアナログから遠ざかることはなく、ずっと、この他では絶対に真似ができない深みのある写真を撮り続け、焼き続ける。
デジタル化されたものの中にいて、いつか、きっと、はっと息をのむような、そんな世界を残す。それがわたしがやるべきことだと。
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